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審査の際に、「どうしてこのような目標になっているのだろう?」「なぜ、このような運用になっているのだろう?」と疑問を持つことがあります。たとえば、以下のような事例があります。

  • 【事例1】EMS、QMSの統合マネジメントシステムを運用されている組織で、製造部門では不良率の削減が品質面、環境面両方の目標として設定され、活動されていました。
    実績を確認すると、不良率は削減されていますが、設計起因の不良があまり減少していませんでした。設計部門で目標を確認したところ、品質面の目標は設計期間の短縮、環境面では紙・ゴミ・電気の削減となっていました。
  • 【事例2】工場全体の電気使用量の削減を目標とし、総務課が工場全体の電気使用量の監視測定を行っており、半年経過した時点で目標を達成できていませんでしたが、何の対策も検討されていませんでした。
    総務は監視測定を行っているだけで、目標達成の責任部署ではないとのことでした。
    管理責任者に確認したところ、目標に対する責任部署・責任者が明確になっていませんでした。
  • 【事例3】目標に対してどのように達成するのか、具体的な方法がないまま運用されていました。
  • 【事例4】不良率の削減を目標としている事業所で、製造部では対処療法的に不良ごとに是正処置だけを実施し、思ったような不良削減が行われていませんでした。
    一方、品質管理部で確認したところ、不良データを集めていましたが、分析が行われず不良削減に活かされていませんでした。
    同様の例で、ある組織では、目標未達に対して未達の原因が分析されないまま翌年の目標が下方修正されていました。
  • 【事例5】目標未達の場合は不適合とする手順となっているにもかかわらず、不適合にはなっておらず、また是正処置の手順に基づく適切な是正も行われず、内部監査でも何の指摘もされていませんでした。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか?このような事象を見つけた際に、どのような是正をしたらよいのでしょうか?また、このようなことはマネジメントシステムの中でどのようなリスクがあるのでしょうか?
ISOの中では様々な決まりを守ることに傾注され、目標は意外と軽視されているように思います。
今回は改めて、マネジメントシステムの中での目標の位置づけについて考えたいと思います。

まず、目標が経営やISOにおいてどのような位置づけになっているかを確認してみましょう。
経営の中では、目標には二つの側面があると考えられています。
一つは方針管理の中の目標管理、もう一つはモチベーション管理(人事管理)です。
方針管理では、経営環境の分析をし、経営理念に基づき経営戦略を立案し経営計画を立て、計画を具現化するために経営方針を決めます。そして、会社全体の各層、各個人に方針を目標に展開し、今期は何にフォーカスすればよいか、進むべき方向や判断基準を明確に指し示します。
一方、モチベーション管理(人事管理)における目標管理は、ピータードラッガーが提唱したと言われており、各個人にチャレンジ目標を設定することで目標達成へ向けてモチベーションを上げ、またセルフコントロールで目標をめざすことで自ら動く組織を作る役目があります。少年サッカーチームの中でリフティングを連続で今年は100回できるようにしよう、3年後までには500回できるようにしようと目標を立てて活動しているチームと、何もないチームでは3年後には大きな差ができると思います。
また、人事面では新たな経営戦略や事業戦略に続く目標により、各社員の新たに必要とされる力量が明確となり、教育訓練のニーズとなるという一面もあります。
では、「ISOにおいてはどのように位置づけられているか?」というと、ISO9000の用語の定義で「マネジメントシステム」は、「方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム」とあります。
つまりISOは、手順を作って守ることではなく、会社の方針に従って目標を立て、その目標を達成するためにシステム(決まり)を作り、その決まりに従って目標達成する活動であるということです。

なぜ、目標管理が軽視されているのでしょうか?
IAF*は、以前から「組織には一つのマネジメントシステム」で、QMS、EMS、ISMSなどはそれぞれ品質面、環境面、情報セキュリティ面の切り口で一つのマネジメントシステムをみたものであるとしています。マネジメントシステムと事業プロセスが別々に考えられていることが大きな理由であるように思います。
マネジメントシステムと事業プロセスが乖離した状況は、目標管理以外でも見受けられ、最終的には「ISOは手間がかかる」、「ISOは役に立たない」ということでISO認証を返上する組織も少なくありません。非常にもったいない話です。本来のISOの目的を明確にし、経営の中で有用なISOとするため、2015年版の改正では「ISOと事業プロセスの統合」が一つの大きなテーマとなっています。

事業プロセスと結び付けてマネジメントシステムの中で目標をどのように活用すればよいかは、前述の経営の中での目標の位置づけを参考にしていただければ、より経営に役立つ目標管理ができるものと考えます。
このようなことをご理解いただいたうえで、もう一度最初の5つの事例を特に経営の視点(方針管理の視点)で見てみると、「これではいけない!」ということに気づいていただけると思います。
もう一度皆さんの目標、目標管理の活動について見直していただき、より効果的な、経営に役に立つマネジメントシステムを構築・運用されることを期待しています。

*IAF=マネジメントシステム認証機関や製品認証機関等を認定する機関の国際組織として、世界の約70機関が参加し、認定機関間の技術的レベルの整合や相互承認協定の締結を目指して活動しており、その具体的な手段としてIAF文書を定めています。規格改正もIAFの作業部会が中心となって進めています。